共働きのマンション購入
~5つのチェックポイント~

共働きのマンション購入~5つのチェックポイント~

都心を中心にマンション価格は高止まり。住宅ローンの利用の際は「二人で借りて二人で返す」を前提に考える必要がありそうです。共働きのマンション購入のポイントをチェックします。

共働き世帯は増えている?

総務省統計局の調査によれば、90年代はほぼ同数だった共働き世帯と専業主婦世帯の数は、2000年以降、ワニの口のように差が開き、2022年は共働き世帯が1,262万世帯、専業主婦世帯が539万世帯と大きな差となっています。時代の流れとも言えますが、その事情は各世帯によって様々であり、他人と比べる必要は無いのだと思います。

  • マンション購入と共働き世帯の関係は、というと株式会社リクルートが行った「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」によれば、契約者全体に占める共働き世帯の割合は57%。既婚世帯では72.8%。既婚世帯では2020年の72.1%以降、2021年74.3%と3年連続で70%を越えています。

    同調査による世帯総年収の項目では、全体平均が1,034万円と2008年以降で最も高い結果です。ライフステージ別では、既婚世帯の共働き世帯がもっとも高くて平均世帯総年収1,110万円。共働きをしていない世帯では1,035万円です。さらに詳しく見ると、総年収1,000万円以上の既婚共働き世帯は全体の28%あり、世帯主、配偶者それぞれの平均年収は、世帯主が932万円、配偶者が561万円となっています。
  • 購入者の世帯年収が上がるなか、マンション価格はどうかというと、同調査では、平均購入価格は5,890万円となり、2001年調査開始以来最も高くなっています。購入価格「6,000万円以上」が38%、「5,000~6,000万円未満」が22%で、5,000万円以上が全体の6割を占めます。既婚・共働き世帯では、総年収1,000万円以上の世帯では「6,000万円以上」が64.3%を占め、平均6,991万円。総年収1,000万円未満の世帯では「5,000万円~6,000万円未満」が25.2%を占め、平均5,062万円です。

高価格のマンションを購入するには、高い世帯年収が必要です。金利が上昇すると年収負担率が上昇し、家計への影響も大きくなります。購入前の試算と購入後の家計管理の重要性が高まります。

  • マンション選びで重視するのは何?

マンション選びは、希望条件を書き出すところから始めます。希望条件は“3つのP”で整理するとわかりやすいのでお勧めです。“3つのP”とは、Place(場所)、Plan(プラン)、Price(価格)。先ずは個々で希望条件を書き出し、優先順位を付けてみましょう。二人の意見調整はそれからで十分です。

共働きだと、Placeを重視するケースが多いのではないでしょうか。お勤めですと交通利便性は重要です。リモート中心であれば、必ずしも都心駅近にこだわる必要は無いのかもしれません。Placeの条件を二人で調整する際、大切なのは中長期視点です。購入するマンションにいつまで住む予定か、想像してみましょう。

  • 例えば、「45歳で購入し、65歳まで働いて、リフォームしながら住み続ける」プランなら、都心駅近にこだわり過ぎると、リタイア後「のんびりゆっくりしたいなぁ」と思いながらの生活になるかもしれません。セカンドライフの生活快適度も大切にしたいところです。

    また、「30歳で購入し、子どもが社会人になる55歳前後に住替える」ならば、現時点の交通利便性と教育環境を重視しながら、55歳時の資産価値を意識したマンション選びがベターと言えるのではないでしょうか。自分と家族の理想の暮らしを思い描くと物件選びの方針がはっきりしてきます。

  • 頭金は誰が出す?

「いくらのマンションが買えますか?」。購入相談でもっとも多く訊かれる質問は、購入予算に関するものです。購入予算はとてもシンプルで、「頭金をいくら出すか」、「住宅ローンをいくら借りるか」で決まります。あなたの場合はいかがでしょう。

チェックしたいのは、「誰がいくら出すのか」です。例えば、4,500万円のマンションを購入する際、夫が4,000万円の住宅ローンを借入れ、妻が500万円の頭金を出すケース。この場合、物件は共有名義となり、住宅の所有権を登記する際の持分は、夫が4,000/4,500、妻が500/4,500です。

また、頭金ゼロで、夫が3,000万円、妻が1,500万円と、個々が住宅ローンの契約を行うケースの持分は、夫3,000/4,500、妻1,500/4,500です。

  • 登記の持分は、購入資金の拠出割合にならうのが基本です。妻が頭金の500万円を出しているケースで、持分を100%夫にすると、500万円分が妻から夫へ贈与されたとみなされ、贈与税の対象となる場合があります。また、夫の単独名義で住宅ローンを4,500万円借り入れた場合、2人の収入で返済するのだからと夫と妻と50%ずつの共有名義にすると、1,750万円分が夫から妻への贈与とみなされるため要注意です。
  • 頭金を誰がいくら出すのか、出せるのかは、家計の状況に合わせます。頭金が多いほど借入金は少なくて済み、結果的に金利上昇リスクが低減します(変動金利の場合)。一方、頭金を出すと、その分だけ手元資金が減少します。いざという時の緊急予備資金を確保し(生活費の6か月~12か月分等)、直近のライフイベントのお金を確保し、余裕資金がどれくらいあるかをチェックします。

  • 住宅ローンは1人で借りる?2人で借りる?

共働き夫婦が住宅ローンを借り入れる際の選択肢は3つです。1つ目は、夫または妻が、単独で借り入れる。2つ目は、夫と妻の収入を合算して借入れる。そして3つ目が、夫婦それぞれが契約者となるペアローンです。先ずは、基本をチェックしましょう

● 単独名義
住宅ローンの利用には、利用者や住宅の要件を満たす必要があります。利用者の要件には、収入や年齢等があり、住宅ローンを単独名義で利用する場合は、夫または妻がそれらの要件を一人でクリアすることが前提です

● 収入合算
収入合算は、単独名義では年収の要件に満たない、希望の借入額に届かない、と言った場合に夫婦の収入を合算して必要要件を満たす方法です。要件は住宅ローンによって異なりますが、「フラット35」の収入合算の要件は下記です。

【フラット35】

収入合算できる人
右記の全ての要件に当てはまる人、1人まで
・申込み本人の親、子、配偶者等
・申込時の年齢が70歳未満
・申込み本人と同居
・連帯債務者
収入合算できる金額 ・収入合算者の年収の全額まで

※合算額が収入合算者の年収の50%を超える場合には、収入合算者の年齢が借入期間の基準となるため、収入合算者の年齢によっては、借入期間が短くなる場合があります。

<連帯債務者と連帯保証人>
収入合算の場合、主となる契約者を「主たる債務者」、収入合算者を「従たる債務者」と言います。「フラット35」では、夫が主たる債務者で妻が従たる債務者の場合、妻は「連帯債務者」となります。金融機関によっては、収入合算者を「連帯保証人」とするものもあります。

「連帯保証人」が返済義務を負うのは、主たる債務者が返済不能となった場合です。一方の「連帯債務者」は、主たる債務者と連帯して返済する義務があり、仮に、離婚した場合であっても返済義務を負い続けることになります。

<住宅ローン控除の利用は可>
主たる債務者も連帯債務者も、住宅ローン控除が受けられます。控除対象となるのは、自分の持分を取得するための住宅ローン部分。持分と返済負担割合がポイントです。収入合算の場合の連帯債務者が負う返済負担の割合は、収入金額等により定めます。

例えば、4,000万円の住宅を、頭金500万円(妻が拠出)、住宅ローン3,500万円(収入合算)で購入した場合を考えます。住宅ローンの名義(主たる債務者)は夫。返済負担割合を夫が2,000万円、妻が1,500万円。頭金を含めた資金負担から、登記の持分を1/2ずつで設定したとします。

  • 住宅ローン控除の対象となるのは、自分の持分を取得するための住宅ローン部分です。当該ケースでは、持分の1/2と住宅ローンの負担割合から、夫2,000万円、妻1,500万円が控除の対象となります。

    仮に、同じケースで、住宅ローンの負担割合を夫2,500万円、妻1,000万円にすると、夫の持分は住宅価格4,000万円の1/2。すなわち2,000万円。住宅ローンの負担割合が2,500万円あったとしても、住宅ローン控除の対象となるのは、2,000万円分です。持分割合は、購入資金の負担割合にならうのが基本です。

● ペアローン
夫婦それぞれが住宅ローンの契約者となるのが、ペアローンです。単独名義と収入合算が、購入物件に対して1契約だったのに対し、契約が2件となるのが異なる点です。夫と妻が各々の住宅ローンの債務者となり、お互いが相手の連帯保証人となるのが一般的です。

例えば、4,000万円の住宅購入で、夫が3,000万円の住宅ローンを契約し、妻が1,000万円の住宅ローンを契約するようなケースです。それぞれの住宅ローンの年末残高が住宅ローン控除の対象です。なお、契約が2本となるため、契約に伴う諸費用も2本分となることは、チェックポイントです。

夫と妻の住宅ローンが別々であることのメリットは、一方を返済期間35年の固定金利、一方を同15年の変動金利とするなど、ライフプランやキャリアプラン、マネープランに応じた組み方をするなど、融通が利く点です。金利タイプを変えることで、金利の動きに合わせた繰上返済も可能となります。

  • 団体信用生命保険はどうなる?

民間金融機関の住宅ローンを利用する際、団体信用生命保険への加入が要件となっているケースがほとんどです。団体信用生命保険(以下、「団信」)とは、契約者の死亡等の万が一の際、保険金が住宅ローン債務に充当され、以降の返済が不要となり、住宅が家族に残るという保険です。

単独名義で住宅ローンを利用する場合は、契約者の万が一に応じて、住宅ローンが全額完済されます。収入合算で配偶者が連帯債務者となっている場合、「フラット35」のペア連生団信では、夫婦のどちらかに万が一の事があると、住宅の持分や返済負担割合にかかわらず、以降の返済が不要となります。

ペアローンでは、個々の万が一には、個々の残高が完済されることとなり、夫が死亡した場合、夫の住宅ローンは完済されますが、妻の住宅ローンは返済が続きます。

  • ライフプラン・キャリアプラン・マネープランをチェック

Point1にて、中長期視点の大切さをお話しいたしました。「共働き」は、ひとくくりにするには広範囲です。ディンクスとファミリーでは重視するポイントが異なりますし、20代と50代では優先順位も違ってきます。大切なことは、二人のため、家族のためのプランニングです。

働き方は、住宅選びや住宅ローン返済に直結します。リモート勤務が前提となっている職場も多いことと思います。それがいつまで続くのか。ミドル、シニアとなって暮らし方がどうなるのか。子どものこと、親のこと。そして何よりも自分たちはどうしたいのか。年金生活となって住宅ローンが続く、というのは不安です。かといって、80歳まで延々と働き続ける、という前提も心細いもの。

リタイアした後、どのように人生を楽しもうと思っているのか。その時の最高の住空間や住環境はどのようなものか。中長期視点でプランニングし、起こるだろうライフイベントや叶えたいことを書き出し、見える化してみてください。住まいは二人の豊かな暮らしを支える土台です。

※掲載の情報は2023年9月現在
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ファイナンシャル・プランナー
(CFP®) 宅地建物取引士
産業カウンセラー・自分予算®プランナー
大石 泉

(株)リクルートにて週刊住宅情報(現SUUMO)の編集・制作に約15年携わった後、2000年に独立。
「住まい、キャリア、マネー」の3つの柱で個人の豊かな暮らしをサポート。