今の時代だからこそ!
最適な住まいと出会うための
“我が家の場所選び”

今の時代だからこそ!最適な住まいと出会うための“我が家の場所選び”

「住まい選び」の重要要素のひとつは、立地条件です。立地は、間取りなどと異なり、リフォームをして自分の好みに変更することはできません。だからこそ、最初にじっくりと吟味し、最適な住まいの場所を選ぶことが大切です。「場所選び」のポイントをご紹介します。

「場所選び」が大切な理由

「いつまでも快適に暮らせる」ことを大切に、住まい選びを進めていらっしゃる方も多いことと思います。人生100年時代と言われる昨今、いつまでも快適に暮らせることは理想の住まいの条件のひとつです。そのような住まい選びのポイントは、「変えられない事柄を優先する」ことです。

例えば、「間取や設備仕様は気に入ったけれど、場所が気に入らない」と言ってマンションを好きな場所に移動させることはできません。立地条件は変えられない事柄の筆頭です。気に入らない場所に住み続けることが、いかに快適でないか。想像は簡単です。一方、気に入った場所ならば、間取りや設備等をリフォームして快適に暮らし続けることも可能です。

また、場所は「古くならない」という点も重要ポイントです。例えば、将来に住替えの可能性があり、その際少しでも高く自宅マンションを売却したいと考えるならば、立地条件にこだわる必要があります。なぜならば、建物や室内の仕様が経年劣化するのに対し、場所は古くなりません。中古住宅市場において資産価値を維持するには、立地条件が重要ファクターになるのです。

「場所選び」は2起点でチェック

「住まいの場所選び」では、どのような点が注目されるのでしょうか。エリア、行政区、最寄駅、住環境、生活利便施設、駅からの距離など、注目ポイントは多岐にわたります。マンションの立地条件チェックでのお勧めは、2つの起点を意識すること。2つとは、「最寄駅」と「購入予定マンション(現地)」です。両者間の徒歩分数や道路事情等の重要性は言うまでもありませんが、さらに、「最寄駅」と「現地」のそれぞれを起点とした利便性の確認も有効です。それぞれを見ていきましょう。

  • ●「最寄駅」を起点にチェック
    先ずは、重要な「最寄駅」と「現地」の間をチェック。
    徒歩分数、道幅、歩道の有無、交通量、アップダウンの有無などの歩きやすさ、夜間の明るさ、安全性、治安について確認します。子どもさんがいらっしゃるならば、子どもさんの視点でのチェックも欠かせません。
  • 次に、最寄駅周辺をチェック。
    駅前の整備状況、利便施設の充実度、駐輪場、駐車場、バスやタクシーなど交通手段を確認します。タクシー事情は、雨の日に利用する場面などを想定してチェックしてみてください。交番や遅くまで開いているコンビニがあると、いざという時も安心です。
  • そして、最寄駅を起点に通勤や通学、電車利用の場合の交通利便性をチェック。
    乗換えの有無、混雑度、終電の時間など。よく利用する諸施設や実家など、電車移動のスムーズさを確認します。

●「現地」を起点にチェック
物件購入後、「現地」は「自宅」に変ります。まさしく生活の拠点ですから、場所選びは「現地」を起点にチェックすることをお勧めします。現地から最寄駅までのチェックは、前項に同じですが、注意したいのは時間帯。物件見学の時のようなピンポイントではなく、ライフスタイルに応じた時間帯を確認します。単身者やDINKS、ファミリーなどの家族構成や働き方によっても、外出する時間帯は異なります。朝夕の通勤・通学などは、自宅から最寄り駅までの道路や交通事情を確認しておくと安心です。

  • 場所選びで取組んで頂きたいのは、地図上に現地を中心とした同心円を描いて確認することです。徒歩圏、自転車圏、乗用車圏などを想定して書き込んでみましょう。必ず利用する店舗や近くにあると嬉しい施設が徒歩圏に揃っているでしょうか。車利用の場合、同じ方向に生活利便施設がまとまっていると利用しやすいなど、生活場面をイメージして確認します。

未来志向の「場所選び」

子どもさんがいらっしゃる場合は、進学にしたがって通学路が変わるため、現状とともに将来の進路に応じた学区や学校をチェックしておきましょう。また、子どものことだけでなく、自分自身のことも未来志向で考えてみてください。現役時代とリタイア後は、行動範囲も利用施設も変わる可能性大。いつまでも快適に暮らしている自分を想像して周辺環境を確認します。

新型コロナウイルスの終息が待たれますが、「新型コロナ生活行動調査(国土交通省・日立東大ラボ※1)」によれば、その流行の前後において、特定警戒都道府県や東京都市圏での人の流れに変化が確認されました。勤務先への外出が減り、外食や趣味・娯楽の活動場所が自宅から離れた都心・中心市街地から、自宅周辺にシフトしているのです。

  • 実感と一致する当調査結果は、「最寄駅までは便利だけれど自宅の周辺には何もない」物件を選ばない、ことの必要性を示唆しています。新型コロナ危機対応だけでなく、高齢になれば活動範囲は自宅周辺にシフトします。現地周辺に歴史を感じる風情な街並みや紅葉や新緑を楽しめるスポットがあると散歩にもウオーキングにも、年齢を問わず楽しめそうです。5年後、10年後、20年後を想定し、現地を中心にした同心円で住環境をチェックしましょう。

※1 (参照)国土交通省ホームページhttps://www.mlit.go.jp/report/press/toshi07_hh_000162.html

働き方の変容と「場所選び」

新型コロナ対応で3密を避けるため、電車通勤から車通勤に変更したり、自転車を利用したりするケースも増えています。駅近の物件は道が混んで、車利用は不便かもしれません。自転車利用ならば、自転車専用レーンが整備されている道路だと安心です。乗用車や自転車を利用する場合も現地を起点にした地図でチェックしておくと安心です。

●駅周辺~現地
最寄駅から現地までのルートの確認では、歩道の整備状況、人通り、車の量、治安、騒音。最寄駅周辺の生活利便施設の充実度はどうでしょう。「最寄駅にはお店は少ないが隣駅はターミナル駅のため、大型商業施設があって便利」ならば合格点でしょうか。

また、新型コロナの影響で、在宅勤務やリモートワークが増えているご家庭も多いことと思います。販売の現場からは、在宅勤務やリモートワークに対応したワークスペースや間取り、広さを求める動きが出ているとの報告があがっています。夫も妻も子供も在宅という状況ではある程度の広さでそれぞれの空間がないと、なかなか落ち着いて仕事をすることは難しいかもしれません。家族や日常生活から自分を隔離できる住空間へのニーズが高いことは当然だと言えます。

ですが、問題は、希望の住宅をどの場所に求めるのか、という点です。

利便性の良い都心の住宅に、広さや機能を求めると、高額にならざるを得ません。家計に負担となる無理な資金計画で購入するわけにはいきません。都心を避け、郊外や地方で住宅を購入するならば、同じ予算でリモートワークのスペースを確保でき、部屋数を多く、面積を広くすることが可能かもしれません。また、同条件の住宅を都心よりも低価格で購入することもできそうです。

郊外や地方へ転居すると、住環境、教育環境、通勤利便性が一転します。一度購入すると住替えは簡単ではありません。目の前の快適性だけを求めるのでなく、自分と家族のキャリアプラン・ライフプランを十分に考慮した立地条件の検証を忘れてはなりません。

リモートワークで地方移住という「場所選び」

2020年10月27日、東京都の人口が3カ月連続で転出超過になったと総務省から発表がありました(住民基本台帳人口移動報告)。東京では緊急事態宣言が出ていた5月に比較可能な2013年7月以降で初めて転出超過となり、6月はいったん転入超過に戻りましたが、その後は人口流出が続いています。一方で、地方では移住相談の問いあわせが増えていると話題です。

  • 出勤しなくてもリモートで仕事が完了するならば、住まいの場所は関係ありません。都心のオフィスを閉鎖して地方へ移転する事業所も散見されます。この機会をとらえた地方への転居は、広くて快適な住まいと都心では得られない住環境を獲得できる選択肢のひとつです。新型コロナの終息は誰もが願うところですが、リモートワークを促進し、住む場所選びの選択肢を大いに拡げたと言えるのではないでしょうか。

考えておきたいのはその後。永遠にリモートワークで仕事が完結するのかどうか。コロナ危機に打ち勝てば、流行前の状況に100%は戻らなくても、出社の機会が増えるかもしれません。また、子どもが成長し、都心の学校へ通うことになるかもしれません。

地方移住や郊外へ転居する際のリスクのひとつは、自宅を売却して都心に戻るケースです。売却価格が住宅ローンの残債を下回るかもしれません。都心のマンションほど簡単には売却できない可能性を考慮しておきましょう。もちろん、住替えの必要がなければ問題はありません。中長期視点での検討することが大切です。

災害リスクを知り、納得の「場所選び」を

  • 災害列島と言われる日本です。日本国に居住する限り、災害と隣り合わせであることを肝に銘じておかねばなりません。地震など突然に見舞われる災害もありますが、津波、洪水、土砂災害などは、国土交通省のハザードマップポータルサイトで、地域の災害リスク情報を確認できます。自分や家族の安全・安心を守るのは、自分自身です。「知らなかった」では済まされません。確かな情報を入手し、納得の「場所選び」を進めてください。

様々なリスクに備えるには、資金計画に余裕を持つことも大切です。将来の住替えやリフォームが想定されるならば、ギリギリの予算で購入しないこと。住宅ローンを返済しながらも貯蓄ができる返済計画を心掛けましょう。最適な住まいと出会うための皆様の「場所選び」を心より応援しています。

※掲載の情報は2021年1月現在
※掲載の情報を著作権者に無断で転載・使用することはできません
※詳しくは税務署、関係省庁のホームページでご確認ください

ファイナンシャル・プランナー
(CFP®) 宅地建物取引士
産業カウンセラー・自分予算®プランナー
大石 泉

(株)リクルートにて週刊住宅情報(現SUUMO)の編集・制作に約15年携わった後、2000年に独立。
「住まい、キャリア、マネー」の3つの柱で個人の豊かな暮らしをサポート。