最適な住まい(マンション)と
出会うために
“知っておきたい”
モデルルーム&現地見学のポイント

最適な住まい(マンション)と出会うために“知っておきたい”モデルルーム&現地見学のポイント

最適な住まい探しに欠かせないのは、モデルルームと現地見学です。近頃は、バーチャル・リアリティーを活用したモデルルームも増えていますが、新居の住み心地はリアルに体感して選びたいところです。モデルルーム&現地見学のポイントをご紹介します。

モデルルーム&現地でリアルに体験しよう

「世の中は、キャッシュレスやタッチレスなど、プロセスの一部が省略されたり統合されたりする傾向です。住宅売買の相談や住宅ローンの手続きも来店不要になるなど、オンライン化も進んできました。このままでいくと「通販やインターネツトショッピングで、マイホームを購入した」という人が主流となるのもそう遠い未来ではないかもしれません。

しかし、30年、40年と長期にわったって住む家ならば、契約前の現物や現地の確認は欠かせません。「買い間違えた」と簡単に返品できないのが不動産です。特に、新築マンションでは、契約後に竣工することも多く、現物の確認は引渡し直前、というケースも珍しくはありません。それゆえ、モデルルームや現地見学でのリアル体験が重要です。

最適な住まいと出会うために大切な“事前準備”

皆様はモデルルームや現地を見学したことがあるでしょうか。すでに何件くらい見学されたでしょうか。最適な住まい選びのためのモデルルーム&現地見学は、リアル体験でなくてはなりません。取り組んで頂きたいのは、“事前準備”です。モデルルームや現地は、けっして思い付きで出かけないようにしていただきたいです。

●事前準備の目的と目標
事前準備は簡単です。「何のために住宅を購入するのか(目的)」と「どのような住まいを希望するのか(目標)」をあるだけ書き出す、それだけです。例えば目的は、「子どもが成長してきたので住み替えたい」、「在宅勤務のストレスを改善したい」、「結婚するので新居が欲しい」「現在の家は古くて地震等の災害が不安。安心できる住まいで暮らしたい」など。

目標は、目的を達成するための具体的な住まいへの希望です。例えば、「子どものことを考えて4LDKで100㎡超が希望」、「共働夫婦のリモートワークに対応できるワークスペースを確保」、「実家と同じ沿線のマンション」、「耐震性、耐久性に優れた住まい」など。

  • これらの目的や目標を書き出し、一覧表にしておくと、モデルルーム&現地見学の際のチェックリストとなり物件の比較検討に重宝します。また、チェックリストがあれば、情報収集段階で見学物件の取捨選択ができ、候補外の物件を見学しなくてすみ効率的です。目的と目標を見える化してリストにしておきましょう。

モデルルーム見学のポイント

  • ●持ち物
    見学時には、前項のチェックリストを持参します。さらに、カメラ(携帯やスマートフォンでOK)と記録用のノートなど。筆者は、住宅購入の際、「マイノート」を1冊準備することを提唱していますが、マイノートには、見学時の第一印象、質問事項と回答、販売担当者の話、チェックリストの達成度、見学後の感想など、見聞きしたこと、気づいたこと、検討事項などをすべて日付とともに記録しておきます。こうしておけば、物件比較の際、記憶に頼らず記録をもとに正しい判断を導けるためお勧めです。

●マンションギャラリーの模型をチェック
多くのギャラリーには、マンションの模型が展示されています。スルーする人もありますが、模型には情報が盛沢山のため見逃せません。模型を見ながら「敷地入口⇒駐車場⇒エントランス⇒エレベーター⇒住戸」と帰宅時の動線を確認してみましょう。すると、車寄せがあるので、大雨の日も濡れずに外出や帰宅が可能だとか、この住戸の位置ならばエレベーターホールの人の気配が気にならないとか、玄関周りのプライバシーなども確認できます。

また、バルコニーの奥行や庇の部分を見てみると、「奥行きがあるのは嬉しいけれど、採光に影響がありそう」なども想像できます。マンションの敷地全体を俯瞰すれば、敷地の余裕度(建ぺい率)や建物の配置、隣接地や道路付けなどもわかり、現地見学のリアル体験に役立ちます。模型の世界に入り込み楽しく体感してみてください。

●住戸モデルの見学は「ただいま」からスタート
先ずは、モデルルームの玄関ドアを「ただいま!」と言いながら開けてみましょう。モデルルーム見学は、「他人のお宅へお邪魔しました」というスタンスではなく、「我が家に帰ってきた」場面を想像しながら行うことがポイントです。人間の脳とは不思議なもので、「ただいま」と発声すると、頭の中が我が家に帰ってきた場面に切り替わります。

●動線をチェック
さて、玄関ドアを開けたあと、あなたはいつもどのように行動しますか。鞄を置き、靴を脱ぎ、手洗い、うがい。そして、着替え。それとも、靴を脱いだらその手で靴の手入をするのがルーティーンだ、という方もいらっしゃるかもしれません。靴を脱いだら、そのままバスルームへという人もいるでしょう。

自分の動線に適した間取りだと快適です。動線が合致していなくても、少々のことは慣れますので安心ください。ですが、気になる違和感があれば要注意。「違和感」は何かしらの不具合があるというメッセージですから、原因を探りあて解消できるかを検討します。

  • ●暮らしのイメージを持とう
    先の「ただいま」という声掛けもそうですが、暮らしているイメージを持って見学すると、具合の良い所や悪い所がわかってきます。実際の暮らしには家電やインテリアも必要です。新居に持ち込むモノがあれば、それらのサイズを測ってマイノートに記録し、モデルルームや図面で設置場所を確認すると失敗がありません。物件が絞れたらチャレンジください。

気になる収納スペースは、自分や家族の持ち物が収納できるのか。将来、モノが増えても対応可能か。と中長期の視点で検討します。よく考えられた間取りは、デッドスペースがありません。細かい点ですが、「開き戸」と「引き戸」の違いでも有効スペースに差が生じます。

●「素」で見ることの心がけ
モデルルームは、素敵です。暮らし方のヒントとなるコーディネートもあれば、生活感がまったく無いモデルルームもあります。いずれにせよモデルルームで展開される空間は、あなたの暮らしではありません。できる限り装飾やお化粧を取り除き、素顔の状態を想像してみてください。

また、モデルルームは、あなたの希望の間取りではないかもしれません。そのような時は図面情報を活用します。間取図も慣れてしまえば難しくはありません。希望住戸の間取図を手にしながら、想像力を働かせてモデルルームを見学すれば、リアル体験が可能です。

●オプションに注意
キッチンの壁が全面収納となっていて、いいなぁと思うと赤いシールが貼っていたり、リビングの壁紙が素敵だなぁと思っていたら、端っこに青いシールが貼ってあったり。これらは、オプションです。標準仕様ではないため、仕様変更すると費用が発生します。

建築段階において無償(※1)で仕様変更できるものに「メニュープラン」があります。床、クロス、部材の色を選べたり、システムキッチンの色や天板の素材を選べたり。グレードに応じて費用が加算されるものもあります。質感、色目、手触り、仕上り状態などは、モデルルームだからこそのリアル体験。仕様変更は、申込期限、費用、内容を確認して検討します。

(※1)物件により有償の場合もございます。

現地見学のポイント

現地見学は、物件の建築現場だけを見学するのではありません。現地・現地周辺・最寄駅周辺をチェックします。

●駅周辺~現地
最寄駅から現地までのルートの確認では、歩道の整備状況、人通り、車の量、治安、騒音。最寄駅周辺の生活利便施設の充実度はどうでしょう。「最寄駅にはお店は少ないが隣駅はターミナル駅のため、大型商業施設があって便利」ならば合格点でしょうか。

チェックリストには、3~5段階程度でレベルを判定できるようにしておくと良いですね。駅前の駐輪場やタクシー乗り場も要チェックです。最寄駅から通勤・通学までの交通利便性を確認します。リモートワークが増えているとは言え、乗換えが多いとやはりストレスです。

  • ●現地周辺・住環境
    行政の窓口や金融機関、商業施設など、生活利便施設を確認します。現地からの距離や施設の規模や内容を確認します。子どもさんがいらっしゃるのであれば、通学路や学校など教育施設・教育環境の確認は欠かせません。生活スタイルに応じて、散歩やジョギングルート、スポーツ施設、文化施設、公園や緑地帯などの確認もぜひ行いましょう。

最寄駅と現地までの間だけでなく、マンションを中心に範囲を広げて見学します。車の中から眺める方法も良いのですが、街の様子を知るにはバスに乗ったり、地元のスーパーへ行ったりして、ウォッチするのが効果的。シニアが多い、小さい子供連れが多いなど。自分が利用する時間帯に行ってみるのも有効です。「同じ世代が多くて安心した」という声も良く聴きます。

現地周辺の開発事情も要チェック。将来、隣接の古い住宅群が取り壊されて高層マンションが建つと、眺望や採光に支障がでるかもしれません。空き地があったり、古い住宅群があったりする場合は、販売担当者にも開発計画の有無を確認してみましょう。

●時間帯・曜日・天候を変えた見学を
検討が進み、候補物件が絞られてきたら、曜日や時間帯、天候を変えて、見学に行きます。例えば、産業道路などは、土日の交通量は少なく、平日の朝夕は特に交通量が多く、土日の現地見学だけでは気付くことはできません。

駅までの道も夜間に歩くと街燈が少なく暗くて怖いという場合もありますし、雨や風の日は様子が一変するエリアもあります。地形によって、西風が強いなどという場所もあります。風は、音や臭い、粉塵を運ぶため注意してください。地元特有の事情は現地で体感するか、地元の人に訊いてみるしかありません。観察力と取材力を駆使して見学し、マイノートに記録します。

最適な住まいと出会うために。中長期視点で見学しよう

今回は、新築マンションのモデルルーム見学を想定してお伝えしました。中古住宅の内見は、特有のチェックポイントもありますが、基本は同じです。現地見学のポイントは、新築、中古に共通です。ぜひご活用ください。

さらに、中長期視点も大切にしてください。事前準備の購入目的が、例えば「子どものために」という場合、その状態の継続期間が10年程度だとしたらどうでしょう。新居に、30年、40年と住むことを想定すると、子どもが巣立ってしまった我が家は部屋数が多く、広すぎて、住替えを検討することになるかもしれません。中長期視点を持つことで、将来の住替えや買替えを視野に入れた住まい選びが可能です。また、「リモートワークのために」という購入目的の場合なども、その必要性の継続期間を意識しておきましょう。

上記のとおり、最適な住まいと出会うためにも中長期視点は有効です。例えば「安心、安全、快適な暮らしを長く続けたい」という希望ならば、目標とする住まいは「生活スタイルに応じてリフォームしやすい構造のマンション」となるかもしれません。中長期視点のもとトータルバランスを考えて、住まい選びを進めてください。心より応援しています。

※掲載の情報は2020年12月現在
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ファイナンシャル・プランナー
(CFP®) 宅地建物取引士
産業カウンセラー・自分予算®プランナー
大石 泉

(株)リクルートにて週刊住宅情報(現SUUMO)の編集・制作に約15年携わった後、2000年に独立。
「住まい、キャリア、マネー」の3つの柱で個人の豊かな暮らしをサポート。