「住宅ローン控除」で税金はいくら戻る?
~控除率:0.7% 適用期間:原則13年(既存住宅は10年)~

「住宅ローン控除」で税金はいくら戻る?~控除率:0.7% 適用期間:原則13年(既存住宅は10年)~

所得税等が還付される「住宅ローン控除」は、住宅購入ビギナーの方からの問合せが多い制度の一つです。2022年4月に大幅に改正された当制度のポイントを正確に理解し、最大限に活用しましょう。

「住宅ローン控除」で所得税と住民税が戻ってくる!(制度概要)

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住宅を新築、取得、増改築を行う場合の税制の特例です。2022年度の税制改正では、控除率、控除期間等の見直しとともに、環境性能等に応じた借入限度額の上乗せ措置等が行われ、適用期限が2025年まで延長されました。

住宅ローン控除の適用を受けると、各年末の住宅ローン借入残高の最大0.7%が所得税から還付され、控除しきれなかった金額は住民税から還付されます。控除を受けるには、住宅や所得、入居時期等の要件を満たす必要があり、住宅の環境性能等に応じて控除額が大きく異なる点は要注意です。

具体例でみてみましょう。
(例1)5月に4,000万円の住宅ローンを借り入れて、新築住宅(省エネ基準適合住宅)を購入した場合で考えます。購入年の年末時点の借入残高が3,900万円だとすると、借入残高の0.7%=27.3万円が所得税から還付されます。納めている所得税が25万円であれば25万円全額が還付され、所得税が30万円であれば、そのうち27.3万円が控除されます。納税額以上には控除されないことにご注意ください。

なお、上記(例1)で、控除額27.3万円、所得税額25万円の場合、控除額に満たなかった2.3万円(27.3万円-25万円)は、住民税から還付されます(上限値あり)。

とてもありがたい住宅ローン控除ですが、注意したいのは住宅の要件です。例えば、(例1)の購入住宅が省エネ基準適合住宅等ではない既存住宅の「その他の住宅」だった場合、年末の借入残高が3,900万円あったとしても、還付額は2,000万円×0.7%の14万円。さらに、控除期間は10年です。単年度の差額もさることながら、13年と10年の控除期間の差もあなどれません。住宅ローン控除の適用要件を考慮すれば、住宅性能も物件選びの重要要素となりそうです。

「住宅ローン控除」制度のポイント

「住宅ローン控除」で知りたいのは、税金の還付額です。しかもそれは、「我が家の場合は?」ということではないでしょうか。試算に必要なのは、「控除率」、「控除期間」、「対象となる住宅(我が家)の性能区分」、「入居年」、「住宅ローンの借入額」、「所得税額」です。「所得税額」は、源泉徴収票で確認します。「いつ、どのような住宅をいくらで購入するのか」、購入計画と資金計画が具体的であるほど、住宅ローン控除の効果も明解となります。各項目を見ていきましょう。

控除率は0.7%。控除期間は原則13年間、既存住宅は10年間

住宅ローン控除の控除額は、各年末の借入残高に控除率を乗じて計算します。2022年4月の改正で控除率は1.0%→0.7%に引き下げられました。

現在、住宅ローンの金利は固定金利型を中心に上昇傾向です。控除率が0.7%に引き下げられたとは言え、例えば、金利1.4%の住宅ローンであれば、その半分は住宅ローン控除で還付があり、0.7%未満の住宅ローンであれば、逆ザヤとなる状況です。

住宅ローンの金利タイプを選ぶ際は、金利の低さ、諸費用の安さだけでなく、金利の変動リスクを十分に考慮する必要があります。金利が上昇しても、そして、物価が上昇しても、返済継続可能な資金計画が大切です。

一方、控除期間は、原則10年間だったのが13年間に拡大されています。例えば、新築の省エネ基準適合住宅で年末の借入残高が4,000万円以上の場合、単年度の控除額は28万円。13年間を通じて、借入残高が4,000万円以上であるならば、合計控除額は364万円になる計算です。

ただし、控除額が高額でも、それに見合う所得税額が無ければ、控除額全額の還付は受けられません。制度利用の効果は、借入残高、控除期間、所得税額と総合的に判断します。

なお、中古住宅の控除期間は10年のまま。新築住宅等の場合も、「その他の住宅」は2024年以降の入居は、10年間と短くなります。「その他の住宅」に該当するか否かは、「住宅の区分」がポイントです。次項でお話しします。

住宅の環境性能等により控除額に差!入居年にも要注意

「住宅ローン控除」のねらいの一つは「環境性能等の優れた住宅の普及拡大を推進すること」。より良質で環境性能等に優れた住宅には、控除額増額というメリットを提供し、購入促進を図ろうという意図です。

    「新築住宅・買取再販住宅※1」の区分は、住宅の性能等に応じて下記の4つに細分化されました。なお、「既存住宅(中古住宅)」は2区分です(表①参照)。

  • ① a.長期優良住宅・b.低炭素住宅
  • ② c.ZEH水準省エネ住宅
  • ③ d.省エネ基準適合住宅
  • ④ e.その他の住宅
  • ※住宅の種類は表②参照

住宅ローン控除の対象となる借入限度額は、この区分ごとに決まります(表①参照)。「新築住宅・買取再販住宅」の長期優良住宅・低炭素住宅:5,000万円から、「既存住宅」のその他の住宅:2,000万円までと大きな差。住宅性能の違いで控除額が大きく異なる事実は、住宅選びのヒントとなりそうです。

なお、「新築住宅・買取再販住宅」の借入限度額は、2024年の入居以降、住宅性能にかかわらず減額されます。特に「その他の住宅」では、ゼロ(対象外)となるため要注意。2024年以降に新築の建築確認を受ける住宅は、住宅ローン控除の対象となるために省エネ基準の適合要件を満たすことが必要です。

【表①】「住宅ローン控除」制度のポイント

【新築住宅・買取再販住宅】

住宅の環境性能等 借入限度額 ※住宅ローンの年末残高の上限 控除期間
2023年入居 2024年・2025年入居
a.長期優良住宅・b.低炭素住宅 5,000万円 4,500万円 13年間
※ 2024年以降に入居する
「d.その他の住宅」は、10年間
c.ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円
d.省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
e.その他の住宅 3,000万円 0円
※2023年末までに建築確認を
受けた新築住宅は、2,000万円

【既存住宅(中古住宅)】

住宅の環境性能等 借入限度額 ※住宅ローンの年末残高の上限 控除期間
2023年~2025年入居
  • a.長期優良住宅・b.低炭素住宅
  • c.ZEH水準省エネ住宅
  • d.省エネ基準適合住宅
3,000万円 10年間
e.その他の住宅 2,000万円

【表②】「住宅の種類と内容(参考)」

種 類 内 容
a.長期優良住宅
(認定長期優良住宅)
長期優良住宅の普及の促進に関する法律に規定する認定長期優良住宅に該当するものとして証明がされたもの。
b.低炭素住宅
(認定低炭素住宅)
都市の低炭素化の促進に関する法律に規定する低炭素建築物に該当する家屋および同法の規定により低炭素建築物とみなされる特定建築物に該当するものとして証明がされたもの。
c.ZEH水準省エネ住宅
(特定エネルギー消費性能向上住宅)
a.b以外の家屋で、日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を有する家屋に該当するものとして証明がされたもの。
d.省エネ基準適合住宅
(エネルギー消費性能向上住宅)
a.b.c以外の家屋で、日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有する家屋に該当するものとして証明がされたもの。
e.その他の住宅 dの省エネ基準を満たさない住宅。

※1「買取再販住宅」とは、宅地建物取引業者が、住宅を所有者から買い取り、一定の質の向上を図るためのリフォームを行った後、個人の自己居住用住宅として販売するもの。取得する住宅と、その住宅に対して行われた工事が要件に適合すると、買取再販住宅を販売する宅地建物取引業者は、不動産取得税が軽減され、買取再販住宅を購入する個人は、登録免許税の税率が0.1%に軽減される特例がある。

既存住宅(中古住宅)の築年数要件

既存住宅のうち新耐震基準適合住宅(1982年1月1日以降に建築された住宅)は、住宅ローン控除の対象です。また、建築後使用されたことのあるもので、地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、耐震基準適合証明書等により証明された住宅も控除の対象です。

既存住宅の築年数要件は、以前の「マンション等の耐火建築物は築後25年以内、耐火建築物以外では築後20年以内であること」から緩和されています。

床面積は50m²以上。2023年末までの建築確認で40m²以上50m²未満も可(所得要件有り)

住宅ローン控除の適用を受けるには、登記簿面積が50m²以上必要です。2023年末までに建築確認を受けた新築住宅で、合計所得金額が1,000万円以下であることを条件に、床面積要件が40m²以上に緩和されます。合計所得には、給与所得のほか、副業等による事業所得、賃料収入等の不動産所得、仮想通貨等の取引による雑所得なども含みますので、該当する方は留意ください。

所得要件は2,000万円以下

「住宅ローン控除」には所得要件があります。控除の適用を受けるには、合計所得金額が2,000万円以下でなければなりません。2022年度の「住宅ローン控除」改正の背景は、中間所得層が良質な住宅を購入することをサポートして経済の回復を図り、環境性能等の優れた住宅を普及させること。中間所得層を想定すれば、以前の所得要件である「3,000万円以下」は少々違和感ありと言えたかもしれません。なお、前項の床面積40m²以上50m²未満の場合は、合計所得金額1,000万円以下が要件です。

その他の適用要件

「住宅ローン控除」制度の利用にあたっては、下記の要件も要チェックです。

    【その他の主な要件】

  • □償還期間10年以上の住宅ローンであること
  • □床面積の2分の1以上が自己の居住用であること
  • □住宅を取得した個人が居住していること
  • □住宅の引き渡し又は工事完了から6か月以内に居住していること

    下記に該当する場合は、税務署等にて諸条件をご確認ください。

  • ※東日本大震災の被災者の方で住宅ローン控除を利用する場合
  • ※一定の要件を満たす増改築で住宅ローンを借入れ、住宅ローン控除を利用する場合

共働き世帯は、住宅ローンプランと住宅ローン控除の最適化を目指そう

先に、新築の省エネ基準適合住宅で年末の借入残高が4,000万円以上ならば、控除額は28万円になる計算だとお話しました。それでも、本人の所得税と住民税が28万円に満たなければ、控除の恩恵を最大限に受けることはできません。

このような場合、共働きで所得税を納めている配偶者がいるならば、4000万円の借入れを、ペアローンなどで夫2500万円、妻1500万円と収入に応じて二人で借入れるプランも選択肢のひとつです。住宅ローンをシェアすると、控除額は夫(17.5万円)と妻(10.5万円)となり、控除額を最大化することも可能です。ただし、一方が仕事を休職、退職して所得税がゼロとなっても、働いている他方の配偶者へ控除枠を付け替えることはできません。夫婦のライフプランやキャリアプラン、所得税額を考慮して、住宅ローンプランニングの最適化を目指しましょう。

我が家に最適なタイミングで最適なマンションを

住宅ローン控除の適用期間は、2025年の入居分まで。まだまだ余裕がありそうです。が、すでにお話したとおり、借入残高は2024年以降に減少しますし、新築住宅等の「その他の住宅」では、控除期間が10年に短縮されます。昨今の物価上昇、素材高による物件価格の上昇、住宅ローン金利の上昇傾向等、憂慮すべき点が多々あります。

今すべきことは、プランニング。特に予算計画が大切です。住みたい場所に住みたい住宅がいつでもあるとは限りません。希望に適う住宅と巡り合った際、すぐ行動するためにも我が家の適正予算を試算しておくと安心です。予算計画は、長期視点がポイント。ベースとなるのは、ライフプランとキャリアプランです。

「低金利だから」、「住宅価格が少しでも低いうちに」などは、動機のひとつにはなるかもしれませんが、購入の主目的ではありません。大切なことは「自分と家族の豊かな暮らしのための最適な住空間を手に入れること」ではないでしょうか。何千万円という高額の住宅を何十年という住宅ローンで購入するのですから、最高のマンションを家計に優しい予算と返済計画で購入していただきますと、とても嬉しく思います。

※掲載の情報は2023年4月現在
※掲載の情報を著作権者に無断で転載・使用することはできません
※詳しくは税務署、関係省庁のホームページでご確認ください

ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
宅地建物取引士・産業カウンセラー・自分予算®プランナー
大石 泉

(株)リクルートにて週刊住宅情報(現SUUMO)の編集・制作に約15年携わった後、2000年に独立。
「住まい、キャリア、マネー」の3つの柱で個人の豊かな暮らしをサポート。

分譲マンション事業
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1972 年より関西・関東・東海エリアを中心に全国で分譲マンションを供給。
2022 年に分譲マンション事業50 周年を迎えました。
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これからも東レグループの総合力と技術力を基盤として、オリジナリティのある住まいの創造、
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