「住宅ローン減税」と「すまい給付金」

住宅ローン減税とすまい給付金

住宅ローンを利用して住宅を購入した際に税金が控除される「住宅ローン減税」。そして消費税率引上げによる住宅の購入負担を緩和する「すまい給付金」について解説します。

所得税・住民税が還付される「住宅ローン減税」

住宅ローン減税は、住宅ローンを利用して住宅を新築、取得、増改築を行う場合の特例です。各年末の住宅ローン借入残高の1%相当額が所得税から還付され、控除しきれなかった金額は住民税から還付される仕組みです。

具体例でみてみましょう。
例)10月に3000万円の住宅ローンを借入れてマンションを購入した場合で考えます。今年の年末時点の借入残高が2900万円だとすると、その1%=29万円が所得税から還付されます。納めている所得税が30万円であれば29万円が全額還付されます。所得税額が10万円であれば、還付額は10万円です。ただし、納税額以上には控除されない仕組みのため注意ください。自身の還付額は、源泉徴収票等にて所得税額を確認するとわかります。なお、控除枠が29万円、所得税額が10万円の場合、還付を受けられなかった19万円(29万円-10万円)は、住民税の還付対象とります(上限値あり)(表1)。

消費税が課税される住宅は、控除対象期間が13年に拡充されました。

「住宅ローン減税」は、年末の借入残高の1%が所得税と住民税から還付される仕組みです。控除対象となる住宅ローンの借入残高には上限があり、消費税が8%に引き上げられた2014年4月のタイミングで拡大されました。控除対象となる年末借入残高の限度額は一般の住宅で4000万円。長期優良住宅等の場合は5000万円です。これは、消費税が課税される住宅であることが要件です。

2019年10月の消費税率の引き上げにあたって、駆け込み需要とその反動減が生じないよう、需要変動の平準化を目的にさらなる制度の拡充が図られ、これまで10年間だった控除期間が3年間延長されました。延長期間の控除額はどうなるかというと、以下、①と②のいずれか小さい額が適用されます。①借入金年末残高(上限4000万円、認定住宅の場合は5,000万円)の1%。②建物購入価格(上限4000万円、認定住宅の場合は5,000万円)の2/3%(2%÷3年)。例えば、11年目の年度末に①借入金年末残高が2000万円、②建物購入価格が2000万円のケースでは、①借入金年末残高×1%=20万円。②建物購入価格×2/3%=13.3万円。よって、①>②となり、13.3万円が還付対象額となる試算です。なお、前項でお話しした通り、納税額以上には還付されないため留意ください。(表2)

共働きは、住宅ローンプランと住宅ローン減税の最適化を目指そう

入居後の10年間を通じて借入残高が4000万円以上あれば、控除額は400万円(=4000万円×1%×10年間)です。制度延長の3年間を同様に控除が受けるならば、120万円が加算され、520万円が還付されることになります。ただし、あなたの所得税と住民税が40万円に満たなければ、控除の恩恵を最大限に受けることはできません。そのような場合、所得税を納めている配偶者がいるならば、4000万円の借入れを、例えば、夫2500万円、妻1500万円などと二人で借入れることにより、控除額を夫25万円、妻15万円などと二人でシェアすれば、控除額を最大化でき有効です。それぞれの所得税額に応じて、住宅ローンを配分すれば良いのです。ただし、どちらかが仕事を休職、退職して所得税がゼロとなっても、働いている配偶者に控除枠を付け替えることはできません。所得税額だけでなく、夫婦のライフプラン、キャリアプランを見据えた住宅ローンプランニングが肝心です。

注意したい中古住宅取引

「住宅ローン減税」を利用する際に注意したいのは、中古住宅を購入する場合です。前回も今回も「住宅ローン減税」の拡充は、消費税率引上げに伴う措置であるため、課税業者ではない個人から購入する中古住宅取引は、住宅価格に消費税は課税されず、制度拡充の対象とはなりません。控除額の引き上げも、控除期間の延長もありません。消費税が課税されない中古住宅の場合、控除対象となる年末残高は、一般住宅で2000万円、長期優良住宅等で3000万円です。なお、課税業者から購入する中古住宅は消費税の対象となるため、制度拡充の対象です。特例を利用する際は、「自分の場合はどうだろう」と具体的に試算することが大切です。

表1住宅ローン減税比較表 ※()内は、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅の適用値

表2住宅ローン控除の拡充措置

消費税率10%が適用される住宅を取得し、2019年10月1日から2020年12月31日までに居住の用に供した場合に適用される。

「すまい給付金」は、現金給付で負担を軽減

「すまい給付金」は、消費税率引上げによる住宅購入者の負担を緩和するために導入された制度です。先にご紹介した「住宅ローン減税」は、支払っている所得税等から控除する仕組みであるため、収入が低いほど減税効果が小さくなります。
一方のすまい給付金制度は、主に住宅ローン減税の拡充による負担軽減効果が十分に及ばない収入層を対象としており、住宅ローン減税とあわせて消費税率引上げによる負担の軽減をはかるものです。収入によって給付額が変わる仕組みで、収入が低いほど給付基礎額は大きくなります(表4参照)。以下、ポイントを確認しておきます。

(参考)国土交通省「すまい給付金サイト」

「給付額」は、年収と持分で決まる

すまい給付金の給付額は、上記の計算式で決まります。住宅ローン控除のように「借入残高の1%」という形式ではなく、「給付基礎額」があらかじめ規定されていて、消費税率10%の場合は10万円・20万円・30万円・40万円・50万円の5種です(表4参照)。
「給付基礎額①」は、収入額の目安(都道府県民税の所得割額)によって決まるため、市区町村が発行する個人住民税課税証明書に記載されている「都道府県民税の所得割額」で確認する必要があります。サラリーマンは、毎年6月頃に発行される住民税課税決定通知書をご確認ください。(表4参照)
「持分割合②」とは、住宅に対する所有権の割合です。例えば、4,000万円の住宅を取得するケースで考えてみましょう。父親が1,000万円の頭金を出し、息子が2,000万円、息子の妻が1,000万円の住宅ローンをそれぞれ借入れて3人の共有名義とする場合は、父親が4分の1、息子が2分の1、妻が4分の1の持ち分を持つこととなり、これを登記簿に記載します。土地には消費税がかからないため、すまい給付金では建物の登記事項証明書(権利部)で持分割合を確認します。

表3 給付額の例

住宅所得者持分割合 居住の有無 給付基礎額 給付基礎額
父親
収入300万円
1/4 50万円 居住していないため
対象外
息子
収入650万円
1/2 20万円 10万円
(20万円×1/2)
息子の妻
収入200万円
1/4 50万円 12.5万円
(50万円×1/4)

※表内の「収入」は、都道府県民税の所得割額とする。

すまい給付金の特長は、給付基礎額の表4でもわかるとおり、収入額が低くなるほど給付基礎額が大きくなることです。事例では、持分が最も多い息子の給付基礎額がもっとも低くなります。すまい給付金制度が、住宅ローン減税の効果を得られない収入層の負担減を意図していることがわかります。

なお、この例では父親は、すまい給付金の要件の一つである「自らが居住すること」を満たしていないため、持ち分があっても給付の対象外です。当制度には、このほかにも対象となる人の要件や住宅の要件があります。 詳細は、国土交通省「すまい給付金サイト」を参照ください。

(参考) 国土交通省「すまい給付金サイト」

自分の条件で試算し、最適な資金計画、返済計画を実現しよう

住宅ローン減税や住まい給付金の効果を測るには、自分のケースにあてはめて考えることが肝心です。源泉徴収票や住民税決定通知書などで自分や配偶者の納税額を確認し、住宅ローンの借入額、持分割合と照合してください。住宅ローンの借り方や返済方法には、様々なバリエーションがあります。
また、個々の条件によって減税効果や負担軽減の度合も異なります。購入予算や資金の調達先、自分や家族の働き方や家計に適した資金計画、返済計画でないと「もったいない」プランニングとなってしまいます。

さらに、特例と言われる税制優遇は、「住宅ローン控除」も「すまい給付金」もみずから申告しなければ恩恵を受けられません。申請方法は、最寄りの税務署や国税庁のホームページ、すまい給付金サイト等で確認ください。

マンション等のマイホーム購入は、一生涯に何度とない大きな買い物です。消費税増税後も、住宅ローン減税やすまい給付金を始め、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置など、増税への負担軽減措置が講じられています。ただし、期間限定の特例もあり購入時期には注意が必要です。さらに、中長期でのマイホーム取得計画の場合は、物件価格や住宅ローンの金利動向も気にしたい要素です。正確な情報を収集して自身の条件にあてはめ、無理なく無駄なく最適な資金計画で自分と家族にぴったりのマンションを選択ください。

※掲載の情報は2019年10月現在
※掲載の情報を著作権者に無断で転載・使用することはできません
※詳しくは税務署、関係省庁のホームページでご確認ください

ファイナンシャル・プランナー
(CFP®) 宅地建物取引士
産業カウンセラー・自分予算®プランナー
大石 泉

(株)リクルートにて週刊住宅情報(現SUUMO)の編集・制作に約15年携わった後、2000年に独立。
「住まい、キャリア、マネー」の3つの柱で個人の豊かな暮らしをサポート。