自分にとっての“買い時”と住宅ローンの金利動向

自分にとっての“買い時”と住宅ローンの金利動向

「絶好のタイミングで自分と家族に最適な住まいを購入したい」。
そんな思いを叶える「マンションの買い時」を考えてみましょう。

  • 刻々と変化する住宅購入を取り巻く環境 今こそ、自分にとっての「買い時」を考えましょう。

    「今は買い時?」と尋ねられたらあなたは何と答えるでしょう。「買い時だ」と回答するならばその理由は何でしょう。「金利が低いから」「税制優遇が充実しているから」など、いろいろな理由が出てくることと思います。ところでそれらの理由は、「自分や家族の買い時」を意味するものでしょうか。自分にとっての買い時の条件とは先ず「住みたい場所に住みたいマンションがある」こと。そして「購入予算内である」こと。この2つの条件が整えば、ほぼあなたにとっての買い時です。

    では、「住みたい場所の住みたいマンションと巡り会う」には、どのようにすればよいのでしょうか。

それには、「3つの知る」が有効です。「3つの知る」とは、「自分を知る」「相手を知る」「世間を知る」の3つ。先ずは、自分や家族の夢や希望、購入予算を確認(自分を知る)。そして、希望条件に合った売主、管理会社、建物、地域、価格、住宅ローンなどの諸条件を比較検討してマンションと金融機関を絞りこむ(相手を知る)。さらに、市況や相場、税制等のマンション購入を取り巻く環境を知る(世間を知る)。これら「3つの知る」は、自分や家族にぴったりのマンションを見極めるのに効果的です。

「3つの知る」のうち、購入好機を決断するのに役立つのが、「世間を知る」です。希望条件に合ったマンションを目の前にして、「このマンションに決めてよいのだろうか」と悩んでしまう場面では特に有効です。

「買い時」を掴むために、「世間の条件」を知っておこう!

「世間の条件」とは、金利、税制、市況など、あなたの個別要因ではない世の中の状況のことです。世間を知らないと、「待っていればよいことがあるかも」と錯覚に陥って購入好機を逃すかもしれませんし、「このマンションしかない」と思い込んで購入し後悔するかもしれません。世間を知ると「我が家の希望を満たすには、このマンションをこのタイミングで購入するのが最高だ」と購入好機を見極めるのに効果的です。個々みてみます。

●販売戸数※
不動産経済研究所の発表によれば、2021年のマンション販売戸数は全国で77,552戸。新型コロナ感染症拡大の影響を大きく受けた前年と比べると29.5%増!2年ぶりの7万戸台です。圏域では、首都圏が前年比+23.5%・33,636戸。近畿圏が同+24.7%・18,951戸。希望エリアの販売戸数卯が増え、希望価格のマンションと巡り合えると最高です。

●販売価格※
資材価格、地価、人件費とコスト高となった2021年。マンションの平均価格は5年連続、㎡単価は9年連続の上昇でした。全国平均は5,115万円(㎡単価93.6万円)で、前年と比べると144万円(2.9%)の上昇です。首都圏平均は6,260万円(同93.6万円)、近畿圏平均は4,562万円(同75.1万円)。高額物件の購入は、長期にわたって安心な資金計画が大切です。

マンション購入を取り巻く世間の条件を見てみると、半導体不足、ウッドショック、資材の輸入制限、原油高、円安、地価上昇と、すぐに価格が下がるような要素は見出せません。景気動向も見ながらの慎重な予算計画、返済計画が求められます。

※出典:不動産経済研究所「全国 新築分譲マンション市場動向 2021年」

●税制優遇
2022年度の税制改正により住宅ローン減税に関する適用期限が4年間延長、新築住宅の控除期間は原則13年に、中古住宅の築年数要件が緩和されるなど、4月から新要件が適用されています。さらに、住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置も適用期限が2年間延長されるなど、住宅税制はバックアップ体制が続きます。

参照「住まいの基礎知識/「住宅ローン控除」改正」https://www.chalier.jp/column/vol22.html

●住宅ローン金利
予算計画に重要なのは、住宅ローンの金利です。現在は比較的低水準でマンション購入をバックアップしてくれています。住宅ローンは、その種類も提供する金融機関も山ほどの数があり、住宅ローンや金利タイプの選択についての相談を多く受けます。長期にわたる住宅ローン返済において、「10年後、20年後の金利はどうなるか」と予測することは不可能です。ですが、金利動向に注目しておくことは、購入時期の決定や「固定金利にするか、変動金利にするか」という選択において、さらには購入後の住宅ローンプランの見直しや借換えにおいても、大変重要です。金利動向の観察ポイントは、固定金利と変動金利の動き、そして、その元となる金利の動きです。

金利が動く仕組み

「金利」には、長いタイプの「長期金利」と短いタイプの「短期金利」があり、どちらも住宅ローンの金利動向に影響を与えます。

長期金利の指標の一つは"長期国債"の利回りです。それを指標に金融機関が決定する金利が、長期プライムレート(※1)。国が発行する債券である国債は比較的安全性の高い金融商品だと言われています。それゆえ、市場が不安定な時には人気が高まって国債が買われる傾向が強まります。国債が買われると価格が上昇し金利は低下。市場が安定し景気が上向きの時には国債が売られて価格が低下し、金利が上昇する仕組みです。現在は、日本銀行が大量に国債を購入し市場に資金を供給しています。

一方の短期金利の指標は、日銀が政策金利としている"無担保コール翌日物(※2)"の金利です。これを指標に金融機関が決定する金利が、短期プライムレート(※3)。無担保コール翌日物は、景気がよくなり資金需要が高まれば、お金の利用料である金利が上昇し、逆に不景気になると、金融緩和によって資金が潤沢であっても資金需要が少なく、その結果お金の利用料である金利も低めに維持されると言われています。

【用語説明】

  • (※1)長期プライムレート
  • 金融機関が優良企業向けに長期貸出(1年以上の期間の貸出)に適用する最優遇金利です。長期プライムレートは以前、長期信用銀行の発行する5年物利付金融債の発行利率に一定の利率を上乗せして決められていましたが、現在、長期貸出では、長期プライムレートはほとんど使われず、短期プライムレートに一定の利率を上乗せした新長期プライムレートが多く使われるようになっています。
  • (※2)無担保コール翌日物
  • 金融機関同士が無担保で翌日返済という条件で短期資金を貸し借りする際の利率です。日本銀行は、金融調節によって、短期金利(なかでも無担保コール翌日物金利)を誘導しています。短期金利の中で最短期物である無担保コール翌日物は、より長い期間の金利が市場で形成される際の基準となる重要な金利です。
  • (※3)短期プライムレート
  • 金融機関が優良企業向けに短期貸出(1年未満の期間の貸出)に適用する最優遇金利です。短期プライムレートは現在、各金融機関の資金調達コストや市場の金利動向に応じて変動するようになっています。新短期プライムレートと言われています。

住宅ローンの金利動向

住宅ローンの変動金利は、短期金利(主に、無担保コール翌日物の金利)に連動します。「変動金利」については、1995年(平成7年)以降に大きな変化はありません。日銀がゼロ金利政策を行って短期金利を限りなくゼロに近い数値に誘導していたため、住宅ローンの変動金利は長期的にみても低め安定という状況が続いています。

ただし、大きな変化がないのは基準金利です。住宅ローンは金融機関同士の競争が激しく、金融機関は基準金利を割り引いて貸し出しているのが現状です。それゆえ、同じ変動金利型であっても、割引幅の違いから金融機関によって差が出たり、同じ金融機関であっても融資実行時によって適用される金利が異なったりしています。

ここ最近、金利が低めに設定されているのは、「10年固定」型住宅ローンです。が、金利が一定期間固定されるタイプの金利は2022年になって上昇傾向。指標の一つである長期金利の上昇を受け基準金利が上昇しています。5月のメガバンクの住宅ローン金利は、10年固定の基準金利で三菱UFJ銀行と三井住友銀行は前月比プラス0.15%とそれぞれ3.69%と3.7%に、みずほ銀行はプラス0.1%の3.05%となりました。2013~2014年以来の高水準です。

基準金利は、金融機関が決める貸出し金利の水準で、住宅ローン金利の定価のようなものです。基準金利、金利の優遇幅、手数料等の貸出条件は金融機関によって異なるため注意が必要です。マンション探しと同様にしっかりと比較検討し、自分に合った住宅ローンを選択ください。

  • 一方、長期固定型など固定金利期間が長いタイプの住宅ローンは、長期金利が指標です。下記のグラフ(※)は固定金利の代表である「フラット35」と特約期間の金利が固定される「10年固定」、そして変動金利の基準金利の推移です。バブル崩壊後は低金利で推移しています。さらに、2016年2月に導入された日銀のマイナス金利政策によって、住宅ローン金利はさらに低下し、2016年8月、「フラット35」は0.90%~1.57%(返済期間21年以上、融資率90%以下)と史上最低金利を記録しました。2022年5月時点の同条件での金利は1.43%~2.35%です。史上最低を記録した時点から0.53、0.78%の上昇です。

『住宅ローン金利の推移』

※2022年5月時点の情報です。
※10年固定金利は、2021年1月よりみずほ銀行ネット住宅ローンの金利。

日銀の金融政策と住宅ローンの金利動向

日銀は、黒田総裁のもと2013年4月より「異次元緩和」と呼ばれる大胆な量的・質的金融緩和を開始しました。2016年1月には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入。住宅ローン金利の低下に拍車がかかり、長期固定型の「フラット35」も史上最低金利を更新し続けました。同年9月、日銀は新たに「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を決定。長期金利の代表である10年物国債利回りがゼロ%程度で推移するように、年間約80兆円をめどに長期国債の買入れを行う方針となりました。

現在も日銀による金融緩和が継続し、住宅ローン金利は比較的安定しています。が、長期金利の上昇が固定型の住宅ローン金利に反映して上昇しているのは前述の通り。その結果、変動金利と固定型の住宅ローンの金利差が拡大している状況です。

現在の資源高、素材高による企業物価指数の上昇が、消費者物価指数へ反映してくれば、日銀の金利コントロールが緩まり、住宅ローン金利が明確な上昇トレンドに転じる場面が来ることは想定内。過去の経験から「住宅ローンの変動金利は変動しない」と思い込んで返済計画を立てるのは、高いリスクを長期にわたって背負うことになるため、注意が必要です。

自分にとっての「買い時」をキャッチしよう!

「新居を購入したい」「住宅ローンを借換えよう」と、相談案件も着実に増えています。当コラムをお読みくださっている皆様の中には、住み替え、買い替えの方もいらっしゃることでしょう。自宅を売却して新居を購入する場合には、自分にとっての「買い時」とともに、自宅の「売り時」はいつか、という視点も必要です。

売却後も、購入後も、暮らしは続きます。住まいの売買が豊かな暮らしをもたらしてくれるよう、中長期視点でご検討くださりますと幸いです。そして、売却益が出る場合も売却損が発生する場合も、活用できる住宅税制があるかどうかをチェックすることも大切です。

金利、住宅価格、土地価格など、マンション購入を取り巻く環境は刻々と変化しています。物価の上昇は、購入時の諸費用や引越し代、購入後の生活費の上昇に影響を及ぼします。「自分と自分のお金を知る」を重視しつつ、「相手を知る」、「世間を知る」を心がけることが自分にとっての購入好機を掴むポイントです。金利動向も市況も税制も、正確で役立つ情報の収集を心がけ、自分にとっての「買い時」をキャッチしてください。心より応援しています。

※掲載の情報は2022年4月現在
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ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
宅地建物取引士・産業カウンセラー・自分予算®プランナー
大石 泉

(株)リクルートにて週刊住宅情報(現SUUMO)の編集・制作等に約15年携わった後、2001年にFP事務所を設立。
「住まい、キャリア、マネー」の3つの柱で個人の豊かな暮らしをサポート。