贈与税の非課税枠が拡充

※掲載の情報は2017年2月現在のものです。

親からの住宅資金の援助は一定額まで税金がかからない

住宅を買うときには住宅ローンを借入れるケースが一般的です。その際に手元資金から頭金をなるべく多く用意すればローンの返済負担を抑えられますが、預貯金などには限りがあるのが実情でしょう。

そこで検討したいのが、親などからの援助の活用です。ただし、ここで気になるのが税金です。通常はたとえ相手が親であっても、金銭の贈与を受けると贈与税の課税対象になります。しかし住宅を購入する時に親や祖父母から資金援助を受けると、一定額まで贈与税がかからない非課税枠が利用できるのをご存知でしょうか。

税制改正で非課税枠が拡充

税制改正により、親などからの住宅資金の贈与税の非課税枠が2017年は700万円に拡充されています。贈与税にはもらう相手や使い道にかかわらず110万円まで税金がかからない基礎控除もあるので、合わせて810万円まで税金がかかりません。
なお、取得する住宅が省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性のいずれかの基準を満たす場合は、非課税枠が500万円加算されて1,200万円になります。基礎控除と合わせると1,310万円まで非課税になる計算です。

図表1.住宅取得資金の非課税枠を受けるための要件(新築住宅の場合)

①贈与を受ける子や孫が贈与の年の1月1日現在で満20歳以上
②同じく合計所得金額が2,000万円以下
③住宅の床面積が50m²以上240m²以下
④原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得すること
⑤贈与を受けた翌年12月31日までに居住すること

 

■非課税枠が加算される住宅の要件

以下のうちいずれかの性能を満たす住宅

  • 省エネルギー性の高い住宅(断熱等性能等級4または一次エネルギー消費量等級4以上)
  • 耐震性の高い住宅(耐震等級〈構造躯体の倒壊等防止〉2以上または免震建築物)
  • バリアフリー性の高い住宅(高齢者等配慮対策等級3以上)

2,500万円まで贈与税がかからない相続時精算課税も選べる

ちなみに贈与税の課税方法は毎年1月1日から12月31日までにもらった額が税金の対象となる「暦年課税」が一般的ですが、特定の親や祖父母からの贈与について別枠で課税する「相続時精算課税」を選ぶこともできます。相続時精算課税を選ぶとその親や祖父母からの贈与については暦年課税に戻ることができず、110万円の基礎控除が使えなくなりますが、累計で2,500万円まで贈与税が非課税になる特別控除が利用可能です。

この相続時精算課税は親や祖父母が60歳以上で子・孫が20歳以上という年齢制限がありますが、住宅取得資金の贈与に関しては特例で親や祖父母の年齢が問われません。さらに前述した700万円の非課税枠も併用できるので、最大で3,200万円(一定の基準を満たす住宅は3,700万円)まで贈与税が非課税になります。

ただし、相続時精算課税の対象となる贈与額については、700万円の非課税枠を除き、援助してくれた親や祖父母の相続が発生した時点で相続財産に加算され、相続税の課税対象になります。贈与を受けた時点で贈与税が非課税になっても、将来の相続時に相続税が課税されるケースもあるので注意してください。

図表2.相続時精算課税制度の住宅取得資金の特例を受けるための要件(新築住宅の場合)

①贈与を受ける子や孫が贈与の年の1月1日現在で満20歳以上
②住宅の床面積が50m²以上
③原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得すること
④贈与を受けた翌年12月31日までに居住すること

夫婦それぞれが贈与を受けたら住宅を共有名義に

贈与税は贈与を受ける額が大きいほど税率が高くなり、通常は700万円を超えると30%以上の税金が課せられます。そう考えると、住宅取得時の贈与税の非課税枠がいかに有利な制度かがわかるでしょう。仮に夫婦がそれぞれの親や祖父母から700万円ずつ贈与を受ければ、1,400万円まで非課税で援助が受けられるのです。

ただし夫婦で贈与を受ける場合は、それぞれの贈与額に応じて住宅の名義を共有にする必要があります。仮に妻が自分の親から700万円の贈与を受けたにもかかわらず、住宅が夫の単独名義になっていると、妻から夫への贈与とみなされて贈与税が課せられてしまうのです。

なお、贈与税の非課税枠を利用するには、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに申告が必要です。税務署で忘れずに申告手続きしてください。また、非課税枠の金額は住宅の契約時点で決まりますが、実際に贈与を受けるのは引き渡し時点が原則です。契約時点で贈与を受けてしまうと、翌年の3月15日までに引き渡しが受けられなかった場合に非課税枠が使えなくなる場合があるので注意してください。

このように住宅購入時に親や祖父母から援助を受ければ贈与税の負担なしに頭金を増やすことができます。頭金が増えれば住宅ローンを減らせるので、返済に伴う利息負担も減らすことが可能です。

家を買うときに親などから援助を受けることに抵抗を感じる人もいるかもしれません。とはいえ、高齢者が持っている資産を有効に生かし、現役世代の住居費負担を減らすという意味で、贈与税の非課税枠は意義のある制度といえます。援助を受けた分は親孝行でお返しし、新居に遊びに来てもらうなどすれば、親子ともに満足度が高まるでしょう。

※掲載の情報は2017年2月現在のものです。
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住宅系シンクタンク「オイコス」代表
大森 広司

住宅ジャーナリスト。SUUMO、All About、日経DUALなど情報誌やネットで住宅関連全般にわたって取材・執筆活動を続けている。
著書に『はじめてのマイホーム 買うときマニュアル』(日本実業出版社)、『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)などがある。