自分にとっての買い時とは

※掲載の情報は2017年5月現在のものです。

刻々と変化する住宅購入を取り巻く環境
今こそ、自分にとっての「買い時」を考えましょう。

  • 「今は買い時?」と尋ねられたらあなたは何と答えるでしょう。「買い時だ」と回答した理由は何でしょうか。「金利が低いから」「消費税10%増税が延期されたから」など、様々な答えが出てくることと思います。ところでそれらの理由は、「自分や家族の買い時」を意味するものでしょうか。自分にとっての買い時とは先ず「住みたい場所に住みたいマンションがある」こと。そして「購入予算が成り立つ」こと。この2つの条件が整えば、ほぼあなたにとっての買い時だと言えます。

    では、「住みたい場所の住みたいマンションと巡り合う」には、どのようにすればよいでしょうか。

それには、「3つの知る」が有効です。「3つの知る」とは、「自分を知る」「相手を知る」「世間を知る」の3つ。まずは、自分や家族の夢や希望、購入予算を確認し(自分を知る)、その希望条件に合った売主、管理会社、建物、地域、価格、住宅ローンなどの条件を照合してマンションを探して絞りこみ(相手を知る)、市況や相場、税制等のマンション購入を取り巻く環境を知る(世間を知る)。これら「3つの知る」は、自分や家族にぴったりのマンションを見極めるのに効果的です。

「3つの知る」のうちもっとも大切なのは「自分を知る」ですが、3つ目の「世間を知る」は購入好機を決断する重要ポイントです。希望条件に合ったマンションを目の前にして、「このマンションに決めてよいのだろうか」と悩んでしまう場面では特に、「世間を知る」が有効です。

「世間の条件」を知っておこう!

「世間の条件」とは、金利、税制、市況など、あなたの個別要因とは関係のない世の中の状況のことです。世間を知らなければ、「待っていればよいことがあるかも」と錯覚に陥って購入好機を逃すかもしれませんし、「このマンションしかない」と比較検討せずに思い込みのみで購入し後悔してしまうかもしれません。世間を知ると「我が家の希望を満たすには、このマンションをこのタイミングで購入するのが良い」そして、世間を知れば「我が家の条件であればこのタイミングが良い」と購入好機を見極めることができるのです。

マンションの販売戸数は2000年をピークに減少傾向。2016年の供給戸数は24年ぶりの低水準でした。単純に言えば選択肢が減少していることになります。一方で上昇しているのが販売価格です。原材料、人件費、土地代などコストの上昇分が販売価格に影響しています。購入者側にとって嬉しい話ではありませんが、この価格上昇のダメージを和らげているのが住宅ローン金利の低下です。史上最低水準で推移する住宅ローン金利や住宅ローン減税をはじめとする税制優遇など、マンション購入をバックアップする諸条件を活用し、自分にとっての「買い時」を見極めましょう。世間の条件だけで判断するのではなく、自分と家族の豊かな暮らしのために最適な住空間はどのようなものか、じっくりと考えて最高のマンションを選んでください。

さて、予算計画の重要要素の一つは、住宅ローンの金利です。先にお話したとおり、現在は低水準でマンション購入をバックアップしてくれています。住宅ローンの種類も住宅ローンを提供する金融機関も山ほどの数があり、マイホームの購入相談では住宅ローンや金利タイプの選択についての質問を多く受けます。長期にわたる住宅ローン返済において、「10年後、20年後の金利はどうなるか」と予測することは不可能です。ですが、金利動向に注目しておくことは、購入時期の決定や「固定金利にするか、変動金利にするか」という選択において、さらには購入後の住宅ローンプランの見直しや借換えにおいても、大変重要です。 金利動向を観察する際は、固定金利と変動金利の動きとその元となる金利の動きです。

金利が動く仕組みについて

「金利」には、長いタイプの「長期金利」と短いタイプの「短期金利」があり、どちらも住宅ローンの金利動向に大いに影響を与えます。

長期金利の指標の一つは"長期国債"の利回りです。それを指標に金融機関が決定する金利が、長期プライムレート(※1)。国が発行する債券である国債は比較的安全性の高い金融商品だと言われています。それゆえ、市場が不安定な時には人気が高まって国債が買われる傾向が強まります。国債が買われると価格が上昇し金利は低下。市場が安定し景気が上向きの時には国債が売られて価格が低下し、金利が上昇する仕組みです。現在は、日本銀行が大量に国債を購入し市場に資金を供給しています。

一方の短期金利の指標は、日銀が政策金利としていた"無担保コール翌日物(※2)"の金利です。これを指標に金融機関が決定する金利が、短期プライムレート(※3)。無担保コール翌日物は、景気がよくなり資金需要が高まれば、お金の利用料である金利が上昇し、逆に不景気になると、金融緩和によって資金が潤沢であっても資金需要が少なく、その結果お金の利用料である金利も低めに維持されると言われています。

  • (※1)長期プライムレート
  • 金融機関が優良企業向けに長期貸出(1年以上の期間の貸出)に適用する最優遇金利です。長期プライムレートは以前、長期信用銀行の発行する5年物利付金融債の発行利率に一定の利率を上乗せして決められていましたが、現在では、金融機関に対する長期貸出では、長期プライムレートはほとんど使われず、短期プライムレートに一定の利率を上乗せした新長期プライムレートが多く使われるようになりました。
  • (※2)無担保コール翌日物
  • 金融機関同士が無担保で翌日返済という条件で短期資金を貸し借りする際の利率です。日本銀行は、金融調節によって、短期金利(中でも無担保コール翌日物金利)を誘導しています。短期金利の中で最短期物である無担保コール翌日物は、より長い期間の金利が市場で形成される際の基準となる重要な金利です。
  • (※3)短期プライムレート
  • 金融機関が優良企業向けに短期貸出(1年未満の期間の貸出)に適用する最優遇金利です。短期プライムレートは現在、短期金利等の市場金利に連動して変動するようになり、新短期プライムレートとも言われます。

住宅ローンの金利動向について

住宅ローンの変動金利は、短期金利(主に、無担保コール翌日物の金利)に連動します。「変動金利」については、1995年(平成7年)以降に大きな変化はありません。景気が良いとは言えなかったこの間は、日銀がゼロ金利政策を行って短期金利を限りなくゼロに近い数値に誘導していたため、住宅ローンの変動金利は長期的にみても低め安定という状況が続いています。ただし、大きな変化がないのは基準金利です。住宅ローンは金融機関同士の競争が激しく、金融機関は基準金利を割り引いて貸し出しているのが現状です。それゆえ、同じ変動金利型であっても、割引幅の違いから金融機関によって差が出たり、同じ金融機関であっても住宅ローンの融資実行時によって適用される金利が異なったりします。

金利が低いのは、「10年固定」型住宅ローンです。基準金利も低下していて2.00%台の金融機関も多くなっています。割引後の適用金利を0.50%台とする金融機関もあり、この金利が10年間固定されるのですからその間は返済額が固定されます。なお、基準金利とは、金融機関が決める貸出し金利の水準で、住宅ローン金利の定価のようなものです。基準金利、金利の優遇幅、手数料等の貸出条件は金融機関によって異なるため注意が必要です。マンション探しと同様にしっかりと比較検討し、自分に合った住宅ローンを選択ください。

  • 一方、長期固定型など固定金利期間が長いタイプの住宅ローンは、長期金利に連動します。下記のグラフ(※)は固定金利の代表である「フラット35」と特約期間の金利が固定される「10年固定」の金利を示していますが、バブル崩壊以降に低下した後はずっと低金利で推移しています。さらに、2016年2月に導入された日銀のマイナス金利政策によって、住宅ローン金利はさらに低下して2016年8月、「フラット35」は0.90%~1.57%(返済期間21年以上、融資率90%以下)と史上最低金利を記録しました。2017年3月時点の同条件での金利は1.12%~1.67%です。

※『住宅ローン金利の推移グラフ』

※2017年5月現在の情報です。

日銀の金融政策と住宅ローン

日銀は、黒田総裁のもと2013年4月より「異次元緩和」と呼ばれる大胆な量的・質的金融緩和を開始しました。2016年1月には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入。住宅ローン金利の低下に拍車がかかり、長期固定型の「フラット35」も史上最低金利を更新し続けました。そして9月には日銀は新たな金融緩和政策を決定。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」です。長期金利の動向は短期金利と異なって日銀が操作することはなく、もっぱら市場に委ねられていました。ところが、長期金利の代表である10年物国債利回りがゼロ%程度で推移するように、年間約80兆円をめどに長期国債の買入れを行う方針となりました。

日銀が長期金利と短期金利を誘導しているため、住宅ローン金利は安定しています。経済環境を鑑みると、米国トランプ新政権の誕生、米国利上げ、ドル高・円安、株価上昇という状況が支えとなって、日銀の金融政策の目的である「物価安定の目標」、消費者物価上昇率が2%を超えてくれば、日銀が政策枠組みを緩めて住宅ローン金利が明確に上昇トレンドに転じる場面もあるでしょう。景気が回復すれば、不動産価格がさらに上昇する可能性も否めません。日銀の動きにも要注目です。

自分にとっての「買い時」をキャッチしよう!

低金利の現在、金利の先高観も手伝って、「新居を購入したい」「住宅ローンを借換えよう」という気運が高まっています。相談案件も着実に増えています。住宅購入を検討中の皆様の中には、住み替え、買い替えの方もいらっしゃるかもしれません。自宅を売却して新居を購入する場合には、自分にとっての「買い時」とともに、自宅の「売り時」はいつか、という視点も必要です。そして、売却益が出る場合も売却損が発生する場合も活用できる住宅税制があるかどうかをチェックしてください。

目まぐるしい市場の動きや世界情勢を個々の指標が敏感に感じ取って、変化を示しています。景気回復に伴って金利、住宅価格、土地価格など、マンション購入を取り巻く環境が変わり、物価が上昇すれば家計や住宅ローン返済にも影響を及ぼします。中長期視点での「自分と自分のお金を知る」を重視しつつ、「相手を知る」「世間を知る」を心がけることが自分にとっての購入好機を掴むポイントです。金利動向も市況も税制も、正確で役立つ情報の収集を心がけ、自分にとっての「買い時」をキャッチしてください。

※掲載の情報は2017年5月現在のものです。
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ファイナンシャル・プランナー
(CFP®) 宅地建物取引士
産業カウンセラー・自分予算®プランナー
大石 泉

(株)リクルートにて週刊住宅情報(現SUUMO)の編集・制作に約15年携わった後、2000年に独立。
「住まい、キャリア、マネー」の3つの柱で個人の豊かな暮らしをサポート。